中国語の文字・方言の種類を徹底解説

中国語全般

中国語といってもいろいろな種類があります。

筆者も中国語を学ぶ前までは、中国語といえば繁体字で書く広東語だと思っていたのですが、実際に習ったのは簡体字の普通話で、ずいぶん違う言葉でした。

この記事では、中国語学習予定の方、そしてすでに多少中国語に触れている方向けに、視覚にも聴覚にも様々な中国語の種類を紹介していきます。

1. 中国語の文字の種類

言うまでもなく、中国語で使われる文字は漢字です。

でも、使われている漢字は、日本のものとはちょっと違います。

どの教科書にもある有名な漢詩「春暁」の前半は、今の日本の国語の教科書には、白文で次のように載っています。

「春眠不覚暁 処処聞啼鳥」

現代の中国大陸の教科書では、同じフレーズが以下のように書いてあります。

「春眠不觉晓 处处闻啼鸟」

台湾や香港などでは以下です。

「春眠不覺曉 處處聞啼鳥」

1-1. 漢字の変遷

漢字の始まりは、甲骨文字と呼ばれる象形文字で、それが金文、大篆、小篆、隷書、草書、楷書というように、少しずつ形を変えていきました。

18世紀には清の康熙帝の勅撰により、漢字を集大成した「康煕字典」が編纂されました。

1-2. 簡略化される以前の漢字である繁体字

「康煕字典」の字体を基本とした漢字です。

字体が今と大きく変わらない隷書のあたりから考えると、すでに2000年以上の歴史があることになります。

日本のいわゆる旧字体もこれに準じています。

今では、台湾、香港、マカオなどで使用されています。

英語ではtraditional Chinese(伝統的な中国語)といいます。

1-3. 従来の漢字を簡略化した簡体字

そもそも漢字の誕生地は中国大陸に属する河南省です。大陸でも昔は「康煕字典」に基づく繁体字が使われていました。

しかし、誰もが字を書けるようにするために、画数の多い繁体字を簡略化する必要がありました。

1956年、「漢字簡略化法案」が成立し、字画を大胆に省略した、簡体字が誕生しました。この後数回の改定が加えられ、今に至っています。

公の場では必ずこの字を使わなければならず、人名も一律この中の漢字となります。

1-4. 日本の漢字

1923年から少しずつ、簡易字体・略字を正式な字体としたものが選定されましたが、戦後の1946年から48年にかけて新たに選定された「当用漢字」が、簡易字体・略字を131字含んでおり、これが新字体になりました。

もとは中国大陸と同じ字体を使っていたのに、それぞれの国が独自で簡略化を進めたため、現在の中国大陸と日本の漢字は、違うものが多いです。

ちなみに中国系の人が多いシンガポールやマレーシアでは、1970年代に中国大陸の簡体字を公用の字として取り入れています。

参考

繁体字 簡体字 日本の字

2. 中国語の発音の種類(ピンインと四声について)

2-1. 中国語について

「デジタル大辞泉」で「中国語」という単語を調べると、次のように出ています。

「(前略)中華人民共和国の公用語。台湾および国外の華僑の間でも話される。方言は、北方・呉・湘(しょう)・贛(こう)・客家(はっか)・閩(びん)・粤(えつ)の七つに大別される。普通話(プートンホワ)とよばれる共通語は、北方方言を基礎とし、北京語の発音を標準音としている。(後略)」

普通話は中国全土で「普(あまね)く通じる話」という意味で、マンダリンとも呼ばれます。

一般的に「中国語を習う」といったらこの普通話を習うのです。

以下、普通話を中心に、中国語の発音の種類を説明します。

2-2. 中国語の発音の要素

中国語では漢字1つが1音節を成しますが、この1音節は、声母、韻母、声調の3要素から成っています。

そしてその読み方を、ピンインという、アルファベットを使用したシステムで記します。

例えば、「冬」の字は「トン」と発音し、その発音の仕方をピンインで[dōng]と表記します。

[d]が声母、[ong]が韻母、そしてoの上に引かれた横棒は声調(第1声)を表します。

2-3. ピンイン

中国語は、書くときは漢字で書きますが、それをどう発音するのかは、ピンインで記します。

中国の子どもたちや、外国人が字を習い始めるときは、最初にこのピンインのシステムを学習します。

ローマ字読みで見当のつく発音が多いですが、中には[zh]や[e]の音など、ピンインの決まりを習わないと読めないものもあります。

2-4. 声母

簡単に言えば、音節を発音するときに最初に発音する子音のことです。

発音の過程で、息の流れが喉や舌や唇などで妨げられますが、どの部分が妨げられるかによって異なる声母を出すことができます。

普通話の声母は21種類、半母音と呼ばれるものを入れると23種類あります。

(引用:愛知県共済生活協同組合ウェブサイト

2-5. 韻母

音節の中で、母音を中心とした部分です。

「中心とした」というのは、簡単に言えば母音の後の鼻音(「ン」に当たるもの)まで入るからです。上の「冬」も、[ong]で1つの韻母として扱います。

普通話の韻母は36種類あります。

(引用:愛知県共済生活協同組合ウェブサイト

日本語だと母音は5つ、それぞれに「ン」をつけても合計10種類にしかならないので、大変な数ですよね。

2-6. 声調

声調とは、1音節の中での音の高低のパターンです。

普通話には声調が4種類あります。よく初心者が声調を練習するのに使う音が[ma]の音です。

これを、第1声で高く平らに発音すると、「妈」(お母さん)

第2声で低い音から高い音に発音すると、「麻」(麻)

第3声で低く抑えると「马」(馬)

第4声で高い音から低く落とすと「骂」(罵る)

声調が違うと、同じ声母・韻母でも、中国語話者には別の音に聞こえます。

方言では、音の長さも声調のうちに含めて考えることもあります。

例えば、広東語の声調は13種類と言われますが、これは音の高さばかりでなく、つまる音(促音)かどうか、それとも長いかで別声調としてカウントされています。高さだけで考えると6種類です。

3. 方言の種類

中国語の方言の総数は80種類とも130種類とも言われますが、大きくは北方・呉・湘(しょう)・贛(こう)・客家(はっか)・閩(びん)・粤(えつ)の7つに分かれます。

北方では広い範囲にわたって比較的統一した言葉を話すのに対し、南方では種類が多様で、同じ系統に属する方言同士でもお互い通じないことがよくあります。

なお、ウイグル語等の少数民族の言葉を方言としてカウントすることもありますが、ここでは漢民族の言葉だけを考えることにします。

3-1. 各方言の差は主に発音の違い

中国語が話される地域は広く、文明の歴史も長いため、方言間の違いは大きく、別の方言の話者同士では話が通じないことがよくあります。

発音、語彙、文法等の面で差異がありますが、最も大きいのは発音の違いです。

例えば、上海で広東語を話しても通じません。しかし、漢字で書けばたいてい通じます。

3-2. 各方言の使用人口・地域

※「~語」という呼び方は、日本では国内の方言については「関西語」「東北語」などとは言いませんが、中国語圏では方言についても使用します。

(引用:百度百科

3-2-1. 北方語(官話):政治の中心としての歴史が長い地域の言葉

漢民族全体の70%がこの北方語を使用しています。

長江以北で広く使用されている他、長江南岸地域、湖北省・湖南省の一部、四川省、貴州省、雲南省で使用されています。

これらの地域は地理的に平原が多く、また歴史的には政治の中心であったことが多いので、各地域の人々の往来が多かったため、広い地域で比較的統一した特徴をもつ言語が使われたと考えられます。

3-2-2. 呉語:日本語に最も似ている中国の方言

「呉」とは長江の下流地域、すなわち江蘇省や上海市のあたりを指します。

このあたりは古代から日本との関わりが深かった地域です。

例えば、和服用の織物のことを「呉服」と言いますが、これは中国の呉の地方から日本へ伝わったことからこう呼ばれます。

呉語には、上海で使われている上海語、江蘇省の一部、浙江省の大部分の方言が含まれます。使用人口は全人口の8.4%。

3-2-3. 湘語:毛沢東の母語

長沙語ほか。「湘」とは湖南省の別称であり、北西部を除く湖南省で広く話されています。

使用人口は全人口の5%です。

3-2-4. 贛語(かんご):中国人の耳にも怒っているように聞こえる?

江西省の広い地域、湖北省南東部で使われており、代表は南昌語です。

使用人口は全体の2.4%になります。

3-2-5. 客家語(はっかご):スリナム共和国でも話されています

広東省の梅県語が代表です。

使用人口は4%程度で、広東省、広西自治区、福建省、江西省等の一部で話されています。

客家とは、中国の同地域に住む、かつて華北から移住してきた漢民族の一派を指します。

同じ漢民族でありながら、南方の在来の住民にとっては歴史を通して外来の「客」であり、独自の文化を保ち続けています。

3-2-6. 閩語(びんご):代表は台湾語(福建語)

閩語はまた大きく閩北語と閩南語に分かれます。

閩北語は使用人口1.2%、福建省北部や台湾の一部で使用されています。

閩南語は使用人口3%。福建省南部、広東省東部、海南省、台湾などで使用されています。

台湾系のチャイナエアライン(中華航空)等の飛行機に乗ったらアナウンスで流れてくる台湾語は、閩南語のほうに属します。

3-2-7. 粤語(えつご):「モウマンタイ(無問題)」はこれに属する

香港映画でおなじみの広東語がこれに属します。

広東省と広西省の大部分で使われている言葉で、使用人口は5%程度です。

3-3. 各方言の発音比較

北方 客家
発音 声母 17~24 ~36 20~35 19 17 15 19
[l][n]別 × × × ×
巻舌 濁音 濁音
韻母 36~47 ~60 30~40 67 74 データなし 56
声門 閉鎖 × × [k][t] [k][t] [p] [k][t]
長音 × × × × ×
鼻音 [n][ng] [n] [n] [n][ng] [n][ng] [m] [n][ng] [m] [n][ng] [m]
鼻化韻 鼻化韻 [ü]なし
声調 4~6 5~8 5~8 3~10 5~7 6~8 6~13
その他 プラス軽声 連読 変調 変調

 

3-3-1. 声母

呉語や湘語は声母数が多く、客家語や閩語は少ないです。

どの方言にも無気音と有気音の区別がある反面、清音と濁音の区別があるのは、声母数の多い呉語と湘語だけです。

北方語には巻舌音(けんぜつおん)という音があります。巻き舌ではなく、舌を反らして発音する音です。普通話には[zhi][chi][shi][ri]の4種類があります。

湘語、贛語、閩語、粤語と、広い範囲にわたって、[l]と[n]の区別がありません。すべて[l]で発音される地域もあれば、すべて[n]で発音される地域もあります。「南方[nan fang]」が[lan fang]になるか、「冷[leng]」が[neng]になります。

※無気音と有気音:簡単に説明すると、「ピーチ」「スピーチ」

この2単語をそれぞれ発音したときに、語頭にある「ピ」「p」が、真ん中にある「ピ」「p」より少し強く発音されますが、強いのが有気音、弱いのが無気音です。

3-3-2. 韻母

韻母の数は客家語や贛語といった、声母の比較的少ない方言で多くなっています。北方語や湘語は少ないです。

客家語は韻母数が多いわりに、[ü]がありません。

北方語と湘語には声門閉鎖(つまる音)がありません。呉語などはただつまるだけな一方、つまる時にどの部分で声門を閉鎖するかによって、客家・閩は[k][t]の2種類、粤は[p][k][t]の3種類を区別します。

粤語には長音もあります。

「ン」に当たる音はすべての方言にありますが、呉語と湘語は[n]のみ、北方語と客家語は[n][ng]の2種類、贛語・閩語・粤語は[n][ng][m]の3種類があります。

呉語と湘語は[ng]のかわりに、鼻化韻といって、鼻にかかった音を出す発音があります。

3-3-3. 声調

北方語には高低を持った音節以外に、前の単語や文に添えて軽く発音する軽声というものがあります。

逆に言えば、他の方言は「吧」などの語気詞でもちゃんと声調を持って発音されます。

声調のカウントの仕方としては、声門閉鎖・長音の有無・清音と濁音で声調を分けて数えるため、これらのある方言がどうしても声調数が多くなります。

呉語では、2文字以上の単語の場合、1文字ずつ上がったり下がったりせず、単語全体でトーンが決まります(これを連読変調といいます)。

例えば、上海語で「上海大学」という単語は、この4文字を低高低低で読み、ちょうど日本語の「いけばな」という語を発音するのと似てきます。これのためか、他地域の中国人は、たいてい「日本語に似て速い」と思うようです。

閩語にも連読変調があるほか、単語の組み合わせによって声調が変わります。声調ばかりでなく、声母・韻母も変化することがあります。

3-3-4. その他

呉語と湘語は「文白異読」といって、口語と文語で漢字の読み方が変わることがあります。

どの方言にも多少はありますが、この2語では普遍的です。

3-4. 語彙の比較

北方 客家
普通 四川
(例1) わたし 我 [ウォ] 我 [ンゴ] 我 [ンォ] 我 [ング] (韻母 なし) 我 [ンゴ] 我 [ンゲ/ ンガイ] 我 [グア] 我 [ンゴ]
(例2) 何 什么 [シェンマ] 啥子 [サゼイ] 啥 [サ] 莫过 [モコ] 什哩 [セッリ] 物嘅 [マッゲ] 甚物 [シャミ] 乜嘢 [マッ イェ]

「わたし」という単語は各地であまり変わりません。

方言によっては他の語彙もありますが、だいたい上記のようなものです。

それに対して、「何」という単語は地方によって大きく違いがあります。

3-4-1. 台湾語の語彙

台湾では公の場ではやはり普通話(国語と呼ばれます)を使いますが、日常生活では台湾語を使います。

中国大陸とは別の政治的・経済的・文化的環境にあったため、台湾語の語彙には日本語からの外来語がたくさんあります。

しかも日本語でも外来語や和製英語である「ネクタイ」「テレビ」「リモコン」等の語が多いそうです。

「リモコン」なんて、この世に登場したころは、台湾の日本統治時代はもう終わっていたでしょうに、不思議なものです。

3-4-2. 香港の広東語の語彙

香港では今も普通話より広東語のほうが広く通じます。

1997年の返還以前はイギリスの植民地だったため、英語の影響が大きく、英語からの外来語がたくさん入って来ています。

3-5. 文法の比較

3-5-1. 目的語・否定語

(日本語)わたしは日本へいきません。

(普通話)我不去日本。(ウォー ブ チュイ リーペン)

(上海語)我勿去日本。(ンォウ ヴァ チー ザッペン)

(台湾語)我不去日本。(グァ ボ キー リップン)

(広東語)我唔去日本。(ンゴー ム ホイ サップン)

発音は様々で、字も少しずつ違いますが、すべて「わたし+否定語+行く+日本」の順番になっています。

また、日本語では「日本を行く」とはいいませんが、上記の中国語はすべて「日本」を目的語にできます。

3-5-2. 「(人)に」と「(物)を」の位置

(日本語)(わたしに)お金をくれ!

(普通話)给我钱!(ゲイ ウォー チエン)

(上海語)拨我钞票!(パッ ンォウ ツォピョ)

(台湾語)互我錢!(ホ グァ ジン)

(広東語)畀錢我!(ペイ チン ンゴー)

普通話では(人)(物)の順番で、上海語、台湾語も同じですが、粤語に属する広東語では逆になります。

ちなみに台湾語と広東語はそれぞれ台湾と香港で使用するため繁体字表記になっています。

他に贛語も(物)(人)の順番です。また、客家語においては、(人)(物)、(物)(人)のどちらでも良いそうです。

4. まとめ

以上、文字と方言を通して、いろいろな中国語を紹介してきました。

中国語で仕事や旅行をしようとなると、やはりどの地域にいても普通話をしっかり習得することが第一です。

ただし、相手はいろいろな地方の出身の人がいて、訛りのある普通話を聞く機会も多くなります。

そんなとき、各方言の特徴を押さえておくと、役に立ちますよ。

 

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